Sunday, December 2, 2012

1リットルの涙 - 第 2 話

『15才、忍び寄る病魔』

亜也(沢尻エリカ)の検査を担当した常南大学医学部付属病院の神経内科医・水野
(藤木直人)は、亜也の母・潮香(薬師丸ひろ子)に、彼女の病気は脊髄小脳変性症
だと思われる、と告げた。
この病気は、何らかの原因で小脳が萎縮し、そこに存在する神経細胞が
壊れていくもので、身体を動かすことが次第に困難になっていくという病気だった。
潮香は、この病気は完治した例がない、という水野の言葉にショックを受けながらも、
亜也の検査データを借りたい、と彼に申し出る。
別の医師の診断も聞いてみたいという思いからだった。

水野は、セカンドオピニオンを求めることに賛同しながらも、助言する。
「お嬢さんが自由に動ける時間は限られています。
 限られた時間を有意義に過ごすためには、
 お母さんがお嬢さんの病気を認めることが必要です。」
「娘が治らない病気ですだなんて言われて、
 そんなに簡単に納得したり、認めたり出来ないんです。」
水野は必ず薬を服用させるよう言い、書類の準備をする。

その頃、学校でお弁当を広げる亜也。
まり(小出早織)や早希(松本華奈)は、亜也のお弁当はいつも美味しそうだと
羨ましそう。
「うちのお母さん保健師だからさ、栄養のこととかうるさくて。
 食事のことだけは絶対に手を抜かないの。」
亜也が二人に答えた。

同じころ、亜也は、合唱コンクールのピアノ伴奏を改めて圭子(葵)に頼んでいた。
圭子は相変わらず渋っていたが、ちょうどその様子に気付いた遥斗(錦戸亮)が
「冨田、伴奏上手いじゃん。」と声をかける。
「そういえば、中学の合唱コンクールの時、冨田が伴奏してたよな。」
一緒にいた恩田耕平(水谷百輔)も言う。
「うん。やってよ。」遥斗が言うと、
「え・・・まぁ、遥斗が言うならしょうがないか。」圭子はあっさり引き受ける。
「サンキュ。」そう言い遥斗は教室を出ていった。


職場に戻った潮香は、ネットで病気のことを調べ始める。
『歩行障害』『会話障害』『書字が乱れ』『運動失調症』
そして、『治療法はまだない』・・・。

放課後、バスケットボール部の練習前、まりや早希は、
圭子は遥斗のことを好きなんじゃないか、噂する。
顧問の西野(佐藤重幸)が、北高校との練習試合が決まったことを発表。
部長が出場選手の名前を呼び上げる。
1年生からただ一人、選手に選ばれたのは亜也だった。

その様子を見つめる男子バスケ部員の河本祐二(松山ケンイチ)。
「お前さ、あの子のこと選手としていいと思ってんの?
 それとも、女の子としていいと思ってんの?」
友達に聞かれた祐二は笑ってごまかす。
そして、亜也と目が合った祐二はガッツポーズを送る。
憧れの先輩・祐二から祝福され、亜也は嬉しさで一杯だった。

オープニング映像。
くしゃくしゃに丸められた紙が広げられると、
そこに涙のしずくが落ちて広がり・・・
『1リットルの涙』
友達からの寄せ書きに、『Never Give Up』など彼女へのメッセージが
びっしりと書き込まれています。

生物部。
「こんなことまで生物部の活動かよ。。」
水槽の魚にエサをやりながら耕平が文句を言う。
「当たり前ですよ。
 僕たちが世話をしてあげなくちゃ、彼らは生きられませんから。」
別の生物部員が水槽の中のゴミを丁寧に網ですくいながら答える。

「麻生、お前、麻生圭輔(佐藤祐基)の弟なんだってな。 
 そういえばお前の兄貴も、よくそうやって亀の世話をしていたよ。」
顧問が声をかける。
「麻生君ってお兄さんがいるんですか?」部員が耕平に尋ねる。
「死んだんだよ、去年。」
遥斗は、少し微笑んで亀を見ていた。

「当たり前ですよ。
 僕たちが世話をしてあげなくちゃ、彼らは生きられませんから。」
部員のこの言葉は、これからの亜也の人生を語っているようで、
とても悲しい気持ちになりました。

別の病院の神経内科を回る潮香。
だが、潮香が望む答えを言ってくる医者は一人もいなかった。
「常南大で診てもらったのなら、間違いないと思います。
 この病気を画像で診断するのは、それ程難しくないんですよ。」
潮香は医者にはっきりとそう告げられ、呆然となる。

その日の夜。
亜也の入学式に撮った写真を見て瑞生(陣内孝則)たちはにぎわっていた。
そこへ亜也が帰ってくる。
亜也の顔を見ずに「お帰り!」と潮香が答える。
「それ位の写真なら誰でも取れるんじゃないの。」
憎まれ口を叩く亜湖(成海璃子)に、瑞生は
「亜湖もなぁ幼い頃はこんなに可愛かったのになー。」と昔の写真を広げる。
照れる亜湖。
亜也は家族に、今度の日曜日の練習試合に選手に選ばれたと報告。
家族に背中を向けた潮香の顔色が変わる。
事情の知らない瑞生たちは、大喜び!
「ビールでカンパイだ!」
「お母さんも!」不安を吹き飛ばすように、潮香が笑顔を見せた。
「なんか焦げ臭いんだけど!」亜湖の言葉に潮香がはっとする。
豆腐ステーキを焦がしてしまったのだ。
「お母さん、疲れてるんじゃないの?
 今日は私がやる。」
「いいから・・・早く着替えてらっしゃい。」亜也を気遣う潮香。
「平気平気!」
亜也の手からフライパンが抜け落ち、瑞生の足元に落下。
「大丈夫!?」亜也を心配する潮香。
「私、大丈夫だけど・・・」
「潮香!お前、心配する相手違ってるぞぉ!」
瑞生の言葉を聞きながら、潮香は心配そうに亜也を見つめた。

亜也の病気を一人で抱え込む潮香。
いつものように振舞おうとする潮香の姿が切ない。

=麻生家=
「もうすぐ、実力テストがあるそうだな。」遥斗の父・芳文(勝野洋)が言う。
「はい。」
「頑張らないとね。
 テストの結果次第で2年生からの特進クラスに行けるかどうか
 決まるんでしょう?」と母・佐知子(兎本有紀)。
「ちゃんとやれば、医学部に合格できる。期待しているからな。」
父の言葉には答えず、遥斗は食事を残し、部屋へ上がっていった。

ベッドに横になった遥斗は、兄のことを思い出していた。
家族でキャンプに行ったとき、兄・圭輔と水を汲みに行く遥斗。
野生のウサギに駆け寄ろうとする遥斗を引き止める圭輔。
「ウサギは単独行動が好きなんだ。」圭輔が言う。
「ウサギは寂しいと、死んじゃうんじゃないの?」
「逆だよ。仲間が一緒にいると、ストレスを感じるんだ。
 遥斗に似ているよな。」兄が笑う。
「お兄ちゃん、動物のこと色々知ってて好きなんだから、
 動物のお医者さんになればいいのに。」
「動物も好きだけど、人間の方がもっと好きだからな。」

部屋に飾られた家族写真を撮った日の出来事ですね。
その頃は、とても幸せな家族だったのでしょう。
去年亡くなった兄・圭輔。病気でしょうか。それとも、事故?

潮香は亜也にふらつきを抑える薬と説明し、薬を飲ませる。
「おい、薬とか検査って何なんだよ。」瑞生が聞く。
「最近亜也が身体がふらつくことがあるでしょう。
 念のために検査してもらったの。」
「で?どうだったんだよ。」
「自律神経のバランスが崩れてるんですって。
 思春期にはよくあるんですって。」
「じゃあ心配はないんだな。」ほっとする瑞生に、笑顔で頷く潮香。
「ほらね。なんともなかったでしょ?」亜也も笑う。
「ほんとね。
 病院に予約入れてあるから、傷の消毒、部活の前にちゃんと行ってね。」
「わかってます!」
「理加もほしいー。」
妹の言葉に、亜也はわざと薬を苦そうに飲み込んだ。

夜中、一人遅くまで病気のことを調べる潮香。
潮香の隣には何冊もの本が積み上げられていた。

亜湖が二階から降りてきた。慌てて座布団で本の山を隠す潮香。
「どうした?」潮香が聞く。
「それこっちのセリフ。」
「なんだか、寝そびれちゃってね。」
「・・・ふーん。」
暫く母を見つめた後、亜湖は部屋へと戻っていった。
亜湖は母のいつもと違う様子に感づいているようです。

ある日、亜也は、転倒して切ってしまったアゴのケガの消毒を受けるために、
常南大学医学部付属病院を訪れた。
そこで亜也は、父親の見舞いに来たという少女・優花(松本梨菜)と知り合った。
優花の父親が検査を受けている間、彼女とボール遊びをした亜也は、
一瞬、手が動かなくなり、ボールを顔面で受けてしまう。
優花は、そんな亜也に、「お姉ちゃんも病気なの?」と尋ねた。
優花の父親も亜也のようにアゴをケガしたことがあるというのだ。

「水野先生!」優花が駆け寄った医師は、自分を検査してくれた先生だった。
亜也に不安がよぎる。
亜也が二人に背を向け歩き出したとき、優花の父が看護師に付き添われて
やって来た。
車椅子に乗った優花の父親。文字盤を使っての会話。
亜也と同じ病気なんでしょうか。

乳幼児健診に来なかった家庭への訪問指導に出かける潮香。
「子育てで、何かお困りのことはありませんか?」
「別に。」
「3人もいらっしゃると大変でしょう?
 私も子供4人いるんで、よくわかります。」
「まあ楽じゃないけど。」
台所にいはカップメンやインスタントラーメンの食べ残しばかり
残されている。
潮香は隣の部屋でおもちゃで遊びながらスナック菓子を食べる幼い子供達に
話しかける。
「もうお昼食べた?」
子供達が首を横に振る。
「これから作るところだから。」母親が面倒臭そうに答える。
「好きなもの何かな?朝何食べたの?」
「カップ麺。」
「そう・・・。」
「もういいでしょう!」母親が怒ったように言う。

「小さいお子さんの食事って、大変でしょう?
 栄養のバランスも考えないといけないし、
 好き嫌いしないよう、工夫も必要だし。
 でも、毎日の食事や生活習慣って、とっても大切なことなんですよ。」
「でもうちの子たち、病気一つしたことないし。元気だから。」
「今元気だからって、これから先もずっと元気だって保証、
 どこにもないんですよ!」
「何なのよ!」
「・・・すみません・・・。」

学校の帰り、亜也は子犬と出会う。
子犬のあとを追っていくと、遥斗がいた。
「麻生くん!麻生君ちの犬?」
「池内んちの犬?」
「それじゃ、やっぱ迷子か。」と亜也。
「捨てられたんだろう。首輪してないし。」
「そっか・・・。」子犬を撫でる亜也の横顔をじっと見つめる遥斗。
亜也と目が合い、そっとそらす。

子犬に菓子パンを上げながら遥斗が言う。
「遠慮しないで食えよ。俺達ずっとこうやって生きてきたんだからさ。」
「どういう意味?」
「人間と犬っていうのは、5万年前から一緒に生きてきたんだって。
 人間が狩をして生きてた頃、猛獣が近づくと、
 犬が鳴いて、危険を知らせてくれたんだ。
 だから、人間は安心して眠ることが出来た。
 その代わり、人間は犬に食べ物を与えた。
 そうやって、持ちつ持たれつ生きてきた。」
「ふーん。そうなんだ。」遥斗を笑顔で見つめる亜也。

持ちつ持たれつ。
この辺も、後につながりそうな会話でした。
二人のシーンで流れる音楽は、レミオロメンの『粉雪』。
いい曲ですね。

潮香は、買い込んだ本の一冊の中の、ある編者について調べ始める。
『特に専門とする領域、脊髄小脳変性症研究の第一人者』
『脊髄小脳変性症の治療法開発研究班の主任研究者』
と書かれた説明に、潮香はすがるような思いで、
神経内科医・宮下(森山周一郎)を訪ねてみることにする。

家族には、定期的に訪問している一人暮らしのおじいさんの様子を見に行くと
嘘をつき、夫の車で病院に向かう。

針に糸を通そうとする亜也。
瑞生が妻に頼まれ薬を持ってきた。
「あ、忘れてた。」
「お母さん、仕事でこんなに遅くなることなかったよね。
 不倫でもしてるんじゃないの?」亜湖が言う。
「親をからかうのもいい加減にしろ。」
二人のやり取りを楽しそうに見つめる亜也。
瑞生は亜也に、母親に怪我の報告を連絡しておくよう言う。

亜也は亜湖に、糸通しを頼む。制服のウェストを直そうとしていた亜也に
「また痩せたの?」
「そうみたい。」
「どんなダイエットしてんのよ。」
「してないよー。」
「嘘!
 なんにもしてないのに痩せるなんて、変な病気なんじゃないの?」
「え!?」

=清林医科大学病院=
神経内科医・宮下にMRIを見せる潮香。
「常南大学病院の水野先生には、完治しないと言われました。
 でも、宮下先生なら、何か新しい治療法や、
 完治したケースをご存知なんじゃないかと思いまして。
 手術とか薬とか、何か方法ありますよね。」
「私は、神経内科の医者になって以来、この病気の研究を続けてきました。
 気が付いたら、40年余りが過ぎていました。
 ですが、いまだに、有効な治療法が見つからないことに、じくじたる思いを
 抱いております。」
「海外では、海外では何かいい治療法があるんじゃないですか?」
「今のところ、海外も同じです。
 むしろ、日本の方が、この病気の研究は進んでいるでしょう。」
「先生。あの子助けて下さい。お金ならいくらかかってもかまいません。
 私、どんなことでもしますから。」
「お母さん。この病気は、日常生活に支障をきたす可能性はありますが、
 直ちに命に関わる病気ではありません。」
「だからって、このままじゃあの子は・・・」
「こうしている間にも、研究は進められています。
 新しい治療法や、薬の開発も徐々にではありますが進んでいます。」
「ほんとに何も、何も方法はないんですか?」
「まずは、投薬とリハビリを開始して、
 この病気とどう上手く付き合っていくかということを
 考えていただいた方がいいと思います。
 希望を捨てずに、お嬢さんを支えていってあげて下さい。」
「先生、あの子は・・・あの子はまだ15才なんです。
 たった、15才なんですよ。」
「常南大学病院の水野君は、私の教え子の中でも、最も優秀な神経内科医の
 一人です。」

車に乗り込む潮香。
携帯に、亜也からメッセージが残されていた。
『お母さん、お仕事ご苦労様。
 今日病院行ったよ。
 アゴの傷は、もう心配ないって。
 傷跡も、綺麗に消えるって。
 安心してね。それじゃあおやすみなさい。』
それを聞きながら、潮香の瞳から涙があふれる。
ハンドルに顔をうずめて、潮香はしばらく泣いていた。

午前3時。
部屋でただ、呆然と座ったままの潮香。
瑞生が2階から降りてきた。
「なんだ、帰ってたのか?立花のじーさんどうだった?
 もしかして、また入院か?
 近いうち、見舞いにでも行ってやるか?」
「亜也の病気ってね、脊髄小脳変性症、っていうの。」
「え?」
「脊髄小脳変性症。」
「なんだその、舌噛みそうな名前。」
「だんだん、身体が動かなくなるって。」
「え?立花のじいさんが!?」
「・・・亜也が。」
「え?」瑞生の顔色が変わる。
「あの子、自律神経が崩れてるんじゃない。」
「なんだよ、その、脊髄なんとかっていうのは、」
「だんだん、自分の足で立つことも難しくなって、
 車椅子になって、いつか、寝たきりになって、」
「そんなはずないだろう、お前。何寝ぼけたこと言ってんだよ。」
「文字書くことも、喋ることも、難しくなるって。」
「・・・治るんだろ?な?薬飲めば、治るんだよな。」
潮香が首を横に振る。
「それじゃ、手術すれば、治るんだろ?」
「治療法、ないって・・・。」
「どこのヤブ医者に診せたんだ、お前は!
 他の医者に診せてこいよ!」声を荒げる瑞生。
「いろんな先生に会ったの。
 インターネットでも調べてみたの。
 いろんな本も読んだの。
 この病気の、第一人者の先生にも会ってきたの。
 でもね・・・でもね・・・
 今の医学では治せない・・って・・・。」
妻の言葉に呆然となる瑞生・・・。

翌朝。試合の日。
「おはよう!」亜也の言葉に、顔を見ずに、「おはよう。」と答える瑞生。
「おはよう!今日の試合、頑張ってね。」潮香は弁当の用意をしながら言う。
「今日は家族全員で応援に行くから!」瑞生が言う。
「ばっかじゃないの。たかが練習試合で。私、パス!」亜湖の言葉に
ついm「ダメだ!」と声を荒げる瑞生。
「・・・全員揃って応援に行くんだよ。」
「日曜ぐらい好きにさせてよ。」
「行くのよ。」
母にきっぱりとそう言われ、亜湖も諦める。

試合に出場する娘の元気な姿に、大きな声援を送る瑞生たち。
亜湖だけは、ふくれっつらなまま。

生物部員も生き物の世話に来ていた生物委員も、体育館を覗く。
「池内って結構うまいじゃん。」耕平が関心する。
「よく転ぶのにな。」遥斗はそう言い亜也の姿を追う。

「おかしいだろう。
 ちゃんと、走ってんじゃねーかよ。
 あんなに、上手いじゃねーかよ。
 なんで亜也が・・・」首に巻いたタオルで涙をぬぐう瑞生。
「亜也!」涙を吹き飛ばすように潮香が声援を送った。
「よーし、亜也、行け!」瑞生も大声で声援を送る。

転んでしまった亜也に思わず駆け寄りそうになる瑞生。潮香が必死に止める。
亜也は起き上がり、再び走り出す。
「ばっかじゃないの。転んだぐらいで。」亜湖が呟く。

「ハイ!」仲間に合図を送り、ボールを受け止めようとする亜也。
だが、身体が動かない。
自分の真横をボールがすり抜けていく。
背後にいた選手がボールを受け止め、「亜也!」と叫ぶ。
亜也は振り返ってボールを受け取り、シュート!
亜也のシュートは見事に決まり、家族も選手達も大喜び。
だが、亜也は自分が感じた違和感に不安を隠せずにいた。

試合後、先輩の河本と並んで歩く亜也。
「いい試合だったな。きっとレギュラー間違いなしだ。」
「そんなに甘くはないと思いますけど。」
「まだ持っててくれたんだ。」
亜也のリストバンドに気付いた河本が言う。
それは、中学の頃、亜也が河本にサインしてもらったリストバンドだった。
「俺、合格発表で池内見つけたとき、ホント嬉しかったんだよな。」
「えっ・・・。」

その帰り、公園で一人子犬を探す亜也。
パンを上げながら話しかける。
「さっきね、河本先輩がいい試合だったなって、言ってくれたんだよ。
 それにね、東高に入ったこと、嬉しいって!」
「良かったじゃん!」突然背後から声がする。遥斗だ!
「何でいんの!?」
「メシやろうかと思って。」
「それじゃ、またね。」慌ててその場を去る亜也。
「忘れ物!」
「え!?あぁ、付いてきちゃったの?
 つれて帰ってあげたいけど、きっとダメだろうな。」
「何で?」
「うち食べ物扱ってるから、動物飼っちゃいけないの。」
「ふーん。」
雨が降ってきた。

「お父さん!亜也姉が男連れてきた!」亜湖の言葉にひきつる瑞生。
「亜也姉の彼氏?」
「違うわよ。」
「はじめまして。麻生です。」
「あ・・そう。亜也の、父です。」瑞生が思いっきり睨む。
「怖いんだけど・・・」亜也に助けを求める遥斗。
「ほら、入試の日に助けてくれた子。」
「あ、お前があの二人乗りの男か!」ますます睨む瑞生。
「えぇ!?」
クーンと子犬が鳴く。亜也に抱かれた犬に気付く瑞生。

「ダメに決まってんじゃん!」と亜湖。
「でもかわいそうじゃない。」と亜也。
「しょうがないじゃーん。うちは動物飼っちゃいけないんだし。
 ね、お父さん。」
黙ったままの瑞生。
「でも雨降ってるし、今夜だけでも。」
「しつこいんじゃない?
 私だって小学校の時、野良猫拾ってきたけどダメだったじゃん。」
「なんあら、うちで。」遥斗が言う。
「いいわよ。」潮香の言葉に驚く亜也たち。
「今夜だけなんて言っても、一晩一緒にいたら情が移っちゃって、
 手放せるわけないんだから。」
「飼ってもいいの?」亜也の表情が輝く。
「まあ、しょうがねーな。」瑞生もそう答える。
「何でそうなるの?」亜湖だけ不機嫌そう。
「ちゃんと世話しなさいよ。」
「ありがとう!」
「・・・じゃあ、俺はこれで。
 全然楽勝だったじゃん。」
遥斗が席を立つと、潮香は食事をしていくよう進める。
遠慮する遥斗に
「食っていけって言ってんだ!」瑞生がすごい形相で睨む。
「・・・怖いんだけど・・・」
亜也が笑う。

にぎやかな食卓。
「いつもこんな?」遥斗も楽しそうだ。
理加に言われ、醤油を取ろうとする亜也。
だが距離がつかめずに亜也の手は宙を泳ぐ。
瑞生が慌てて醤油を理加に渡す。
「それって、ギャグ?」何も知らない遥斗が笑った。
話題を変えようと、瑞生は犬の名前を決めようと言い出す。
豆腐屋だから木綿・・・油揚げ・・・厚揚げ・・・
亜湖が却下する。
「ガンモ、とか?」遥斗の提案に、睨む父。
「それ可愛いかも!」亜也が言うと
「あぁ、ガンモかぁ!いいかもなぁ。」と笑う瑞生。
子犬の名前はガンモに決まった。
嬉しそうな亜也の笑顔を見つめる瑞生と潮香・・・。

瑞生と潮香は揃って水野の説明を受けにきた。
水野から借りたMRIを返し、礼を言う潮香。
「お嬢さんは?」
「今日は、私たちだけで来ました。」
「この病気について、まだご理解いただけませんか?」
「理解は出来ました。
 でも・・・気持ちがついていかないんです。
 私は、保健師ですけれど・・・
 何度注意してもお酒やタバコをやめない人たち。
 子供に、ろくな食事を与えない親。
 そういう、健康を省みない人たちを指導してきました。
 だから、自分の家族の健康については、人一倍気を使って・・・
 うちは、共働きで、子供も多いですけれど、
 どんなに忙しくても、食事だけは絶対に手を抜かないようにって、
 ずっとそうやって来たんです。
 なのに・・・どうして・・・亜也なんですか・・・。先生。」
そう訴え泣き出す潮香。妻を気遣いながら瑞生が続ける。
「あのね、先生。昨日、亜也、バスケットの試合に出たんです。
 まだ一年生なのに、先輩より上手いからって、
 めちゃくちゃカッコ良かったですよ。
 足も速かったし。
 ゴールだって決めたんです。 
 まだ、15才なんです。まだ、たったの15才なんです、あの子は。
 まだまだこれから、いろんなことがやれるはずなのに、
 身体が動かなくなるなんて、そんなこと、信じらますか?」
「残念ながら・・・事実です。 
 そしてこの病気は、少しずつですが、確実に進行します。」
水野の顔を悲痛な面持ちで見つめる二人。

その頃、亜也のクラスでは合唱コンクールの練習をしていた。
みんなの前に立ち指揮する亜也。

病院の帰り道。
「亜也・・・病気のこと知ったら、あいつ、どうなっちまうんだ。
 言える訳ないだろう。そうだろう。
 人間ってのは、そんな強いもんじゃねーんだよ。
 たった15才の亜也に、そんなこと言えねーよ。」
「お父さん。辛いけど、私たちがあの子の病気を認めて、
 向き合わなくちゃいけないのかも。
 あの子の為にも。」

水野の診察を受ける亜也。
気付いたことを書き留めるよう言われ、付け始めた日記を読む水野。
「良く書けてますね。これであなたの症状がよくわかります。
 これからも続けて下さい。」
「え?これからも、ですか?」戸惑う亜也。
「薬も今まで通り、飲んで下さい。 
 それから、ふらつきなどをある程度コントロールするために、
 簡単なリハビリを始めてもらいます。」
「リハビリ・・・。」

先に診察室を出された亜也は、そこで優花とまた出会う。
両手に買い物袋を提げた優花に、亜也は手伝ってあげると声をかけ
二人、優花の父親の病室へと向かう。

水野は潮香に言う。
「どんな病気でも、患者さん本人が自分の病気を理解することが、
 治療の第一歩なんです。」
「わかってます。
 でも、告知はまだしないで下さい。」
「お嬢さんは非常に聡明な女の子です。
 いつまでも隠しとおせないと思いますが。」
「お願いします。もう少し、もう少しだけでいいんです。」

桃花の父親の病室に入る亜也。
「お父さん、このお姉ちゃんが手伝ってくれたんだよ。」
ベッドに横たわる桃花の父・明彦の姿に驚く亜也。
主治医、水野宏、とある。
桃花の父親は、文字盤を使い、震える指で、
「あ・り・か・と・う」と礼を言った。

病室を出て母の元へ歩いていく亜也。
潮香が慌てた様子で亜也を探し回っていた。
「亜也。どこ行ってたのよ。探したじゃない。」
「ごめん・・・」

病院の帰り道。
「薬飲んだりリハビリしたり、大変だと思うけど、頑張ろうね。」
「うん!」
「バスケの試合、今度はいつ?」
「まだ決まってない。」
「また応援に行くからね。
 今日も、これから部活でしょ?
 あ、そうだ。ガンモの予防接種に行かないとね。」
「ねぇお母さん。」
「なーに?」
「私の病気って、なーに?」
潮香はその問いに答えられず、黙って歩いていた。

『お母さん
 私の心の中にいつも 
 私を信じてくれているお母さんがいる
 これからもよろしくお願いします
 心配ばかりかけちゃってごめんね』

一部公式HPより引用させていただきました。


家族の健康を気遣い、毎日毎日手を抜かずに食事の支度をしてきた潮香。
その娘の亜也がなぜ、この病気に・・・。
潮香でなくても、そう思わずにいられません。

家族に誰にも話さずに、本やネットで調べ、病院を回り、
医師に質問をぶつける潮香。
病気のことを頭では理解しても、救いを、光を求めて探し回る気持ち。
心がついてこないという気持ち・・・。

そして、第2話では父・瑞生も娘の病気を知ることに。
まるで感情が死んでしまったかのように、淡々と夫に病気を説明する
潮香の姿。
それとは対照的に、戸惑いをあらわにする瑞生の姿。

両親の、子供達の前では普通に過ごそうとする姿に、
それでも涙がこぼれてしまう姿・・・。

遥斗は実話には存在しないそうです。
遥斗の存在は、亜也との恋愛を描きたいのではなく、
命の大切さを問うための存在のような気がしました。
兄を亡くし、両親に心を閉ざしてしまった遥斗。
亜湖の気持ちを一番理解出来るのは、遥斗なのでしょう。

遥斗と兄、両親の話。
犬の話。
生物部員の話。
保健師として働く潮香の姿。
合唱コンクールの練習風景。

原作を読んでいないので、実話との境目がわからないのですが、
全てが、リンクされているのだなぁと感じました。

亜湖も、亜也自身も、うすうす気付いているようです。
そして次週、本人に病気のことに気付いてしまうようです。

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