Sunday, December 2, 2012

1リットルの涙 - 第 8 話


『1リットルの涙』

バスケットボール部の新人戦を応援しに行った亜也(沢尻エリカ)は、
初戦を突破したまり(小出早織)や早希(松本華奈)を祝福する。
すると、保護者会を終えたばかりの潮香(薬師丸ひろ子)たちPTAが校舎から
出てきた。
そのときの潮香の暗い表情に気付いた亜也は、何故か不安な気持ちを抱く。

その日の夕食時。
卒園式のあとのお別れ会に歌う歌の披露をする理加(三好杏依)に拍手を送る
家族。
「理加!すっごく上手!」と亜也。
「あれ?どうしちゃったんだろう。なんか涙出てきちゃった。」
瑞生(陣内孝則)が涙ぐむ。

「フォフォフォンフォンフォンフォフォフォンフォンフォン♪」(森の音楽家)
理加が歌いながら両腕をバタバタさせる姿に
「ピアノの弾き方ってこれでいいの?」弘樹(真田佑馬)が言う。
ピアノがないからしょうがない、という瑞生に、理加、「ピアノ買ってー!」と
可愛くおねだり。
忘れるよう暗示をかける瑞生。
理加ちゃん、可愛いですね~!
亜也に笑いかけるところがとっても可愛かったです。


「ねえお母さん。保護者会、何かあったの?」
「・・・ああ!
 せっかくの機会だからね、これからも亜也をよろしくお願いしますって
 みなさんにご挨拶してきたの。」
「それだけ?」
「そうよ。じゃ、いただきます!」
それでも母の様子が気になる亜也だった。

同じころ、麻生家では、佐和子(兎本有紀)が芳文(勝野洋)に保護者会の経緯を
報告していた。
「予想以上に荒れたわ。保護者会。」
「池内さんのことか?」
「ええ。子供に重い障害の子の手助けをさせるのは不安だっていう
 声が多くて。
 西野先生も2学期から養護学校を考えたらどうかって
 池内さんのお母さんにお話したみたいなの。」
両親の話を聞いていた遥斗(錦戸亮)が部屋に入っていく。
「難しいんですか?あいつ、池内が、普通の高校に通い続けるのは。」
「あの子は進行性の病気だ。
 病状の進む速度も速い。
 今、環境のいい場所へ移って、そっちに慣れておくことが、
 彼女にとって、いいことかもしれない。
 あの子が背負っている荷物は、お前が考えているより
 はるかに重い。
 子供のお前が、簡単にどうこうしてやれる問題じゃないんだ。」
父の言葉に遥斗は何も言い返せなかった。

子供達が寝たあと、潮香が瑞生に話しかける。
「授業が遅れて迷惑だって。
 子供の成績が落ちてるって。
 亜也にはもっと別の環境があるんじゃないかって。」
「そりゃあ仕方ねーよ。
 だってさ、親ってもんは自分の子供のことしか考えられないもんだろ?
 いいじゃないか。
 他の親になんて言われようと、俺たちは俺たちで、亜也のことだけ考えて、
 あいつの為に出来ることをしてやればいいんだよ。
 
授業中、亜也を見つめる遥斗。
亜也はシャープペンをしっかり握れるよう、髪を止めるゴムで
手とシャープペンを結わき亜也はノートを取っていた。

亜也はまりや早希に車椅子を押してもらいながら、学校の見学に来た
中学3年生の姿を見かける。

「去年の春、私の胸の中は、東高に入学する期待でいっぱいだった。
 今の私には、いったいどんな春が待っているんだろう。」

あくる日、潮香の迎えを待って遥斗とともに生物室にいた亜也。
「良くやりますね。」
生物室でノートを広げ勉強する亜也に、遥斗が言う。
「全国模試、もう来週でしょう? 
 こんぐらいしか頑張るところ、ないからさ。」
遥斗がクラスの仕事を放ったらかしにする耕平の代わりに
卒業アルバム用の写真を見ていると、亜也もその写真を見ながら
「私卒業できるのかな。」とつぶやく。
「何言ってるんだよ。」
「わかってはいるんだ。
 これ以上症状が進んだら、いつかは、
 私が自分で決断しなきゃいけないんだって。」
「先のこととか考えてどうすんだよ、バカ!
 お前前に俺に言ったろ?
 今出来ることを頑張るんだって。
 これからもお前が必死で何かをがんばるたびに、
 クラスのアルバムにこういう写真がどんどん増えてくんだよ!」
「・・・どうしちゃったの?
 まるで・・・いい人みたい。」
亜也が微笑むと遥斗は「うるせーよ!」と照れ隠し。
「私・・・ほんとは怖いんだ。
 この学校辞めたら、その時点で、私の人生、
 何かが終わっちゃうような気がして・・・。」
教室の外で二人の会話を聞いていた潮香は、笑顔を作り
生物室のドアを開けた。

その日の夜。
「ねえみんな、ちょっと聞いて欲しいの。
 お母さんね、3月いっぱいで仕事を辞めようと思うの。
 うちにいて、お店手伝ったり、お姉ちゃんの学校に一緒にいったり、
 いろいろしようと思ってるの。」
「でもそんなの、悪いよ。私のせいで。」
「そうじゃなくて。お母さんがそうしたいの。」
「あ、でも、お母さんの給料が無くなると、うちの家計は・・・。」
亜湖(成海璃子)が心配する。
「俺、今度からメシ、半分にするわ。」と弘樹。
「理加もピーマン半分にする!」
「お前それ嫌いだからだろ!」
二人の会話に笑い出す家族。
「ばかやろう。子供は金の心配なんかするんじゃないよ。
 我が池内豆腐店はな、今業績うなぎのぼりなんだから!」
「そのワリにはお小遣い全然あがらないと思うけど?」亜湖がいたずらっぽく言う。
「うざ!!」

子供達が二階に上がったあと、瑞生は潮香に、本当にそれでいいのか、と聞く。
「うん。お金は、なんとかやりくりするから。」
「いや、そうじゃなくてさ。 
 子供達の世話があっても、店の手伝いがあっても、
 ずーっと続けてきた仕事じゃないか。
 4人も子供産んで、その都度産休もろくに取らなくてさ、
 それでも20年間ずっと、続けてきた仕事じゃないか。
 俺さ、ほら、この店継ぐまで、さんざん職転々としたろ。
 だから、若いうちから私の生きがいはこれだって決めて、
 胸張って働いているお前見て、正直羨ましかったんだ。
 だからよ。」
「いいの。」
「でも、」
「いいのよ。今までは町の、みんなの保健師だったけど、
 これからは、家族専属になる。」潮香が笑顔で言った。

『2月9日(木)
 お母さんが保健師の仕事を辞めると言った。
 いつもそばにいてくれると思うと、やっぱり、ほっとするけど。』

一方、亜湖も、亜也のためにあることを決意していた。
「ねえ亜也姉、もしもさ。」亜湖が話しかける。
「うん?」
「もしもの話よ。」
「何?」
「まあいいや。何でもない。」

芳文は水野(藤木直人)の診察室を訪ねていく。
「実験の方は、いかがですか?」
「はい。神戸医大の岡崎先生から、脊髄小脳変性症のモデルマウスを
 提供していただけることになりました。」
「そうですか。
 実験が始まるとどうしても、かかりきりになるだろうから
 大変ですね。」
「ええ。」
「長年医者をやっているとね、患者の頑張りに、勇気を貰うことが
 多いんですよ。
 励ましたつもりでもいつの間にかこっちの方が、励まされてしまうような。
 君も、感化された一人かな、彼女に。」
「そうかもしれません。」
「私に出来ることがあったら、いつでも言って下さい。」
「はい。ありがとうございます。」

亜也が階段を下りるのを支えるまり。
そばを通りがかった男子生徒が、車椅子を運ぶのを自主的に手伝う。
その様子を見ていた富田圭子(葵)、大橋美歩(川原真琴)は、
「ずっとこれからもこうなんだよ。
 池内さん一人にみんなが付き合わされてさ。」と話す。

遥斗を追い、声をかける圭子。
「遥斗は知ってたんだ。だからずっと優しくしてあげてたんだね。」
「は?」
「池内さん。治らない病気なんでしょう?」
「お前何バカなこと言ってんの?」
「だって、みんな言ってるよ。いつか寝たきりになるって。」
圭子を壁に押しやる遥斗。
「いい加減にしろよ!
 二度とそんなことを言うな!」

その頃瑞生は電動車椅子を見に来ていた。
「このように、わずかな力で動かすことが出来ます。
 介助なしで自由に動ける喜びはみなさん、大きいようですよ。」
担当者の説明を聞きながら試乗してみる瑞生。
42万円。その値段に、驚く。

瑞生は、店の営業終了後と休日を使って、知り合いの鉄工所で働くことを
決意する。
「子供達に家計の心配までされたらカッコつかない。
 あいつらに言うんじゃないぞ。」
「・・・了解。」
潮香に口止めする瑞生。だが、階段にいた亜也は聞いてしまっていた。

そんな折、亜也は、全国高校模試を受けるために、まりや早希とともに
会場に向かった。
寝不足なのか、あくびをする早希。
「ごめんね。早起きさせちゃって。」と亜也。
「ああ、平気!
 今回の模試は自信あるんだ。いつもの3倍は勉強した!」と早希が答える。

ベルが鳴り、試験会場の教室へと急ぐ亜也。
焦る気持ちが階段を踏み外し、亜也はサポートをしてくれていたまりと一緒に
階段を転げ落ちてしまう。
亜也は足を怪我し、まりも手に1、2週間の怪我を負う。
「今週、試合だよね。」
その言葉にまりが俯く。
「ごめん!!本当にごめんね、二人とも。」
「いいってば。謝んないでよ。ね、早希。」
「・・・うん。」早希が顔をそむけた。

担任の西野が、亜也は捻挫のため今週いっぱい学校を休むと生徒たちに
伝える。

瑞生は知り合いの鉄工所に行く前に、亜湖に鍋を洗っておいてほしいと
頼むが、亜湖は宿題を済ませたい、と言う。
「宿題!?お前頭どうかしたのか!?」
「お父さんこそどこ行くのよ。」
そのとき、潮香に仕事の電話がかかってくる。
3月でやめると伝える母の言葉に亜也の表情は暗くなる。

亜也が部屋で考えていると、亜湖がやってきた。
「良かったじゃん、包帯とれて。
 もうすぐ学校に行けるね。」と亜湖。
「本当に行っていいのかな・・・。
 私もう、わかんなくなっちゃった。」
「亜也姉、もしもの話していい?」
亜湖が亜也の制服を見つめたあと、亜也の隣に座る。
「もしもさ、私がいっぱい勉強して、
 もしも来年東高受けて、もしも万が一受かるようなことがあったらさ、
 私が一年生で、亜也姉が三年でしょ?
 私いっぱい手伝えると思うんだ。
 学校の行き帰りとか、教室移動する時とか、
 何か困っている時、私いっぱい役に立てると思うんだ。
 そしたらお母さんも仕事辞めないで平気だよ。 
 だからさ、もうちょっとだけ待ってよ。
 もうちょっとだけ、頑張ってみてよ。」
「・・・ありがとう。亜湖。」
「・・・言っとくけど、もしもの話だからね!」
「了解!」二人は見つめあい微笑んだ。

亜也が潮香に車で送られて学校につくと、まりと早希が待っていた。
「いつもありがとうね。」
潮香が二人に言うと、二人の様子がいつもと違っていた。
教室に入ると、みんなどこかよそよそしかった。

診察があるため早退する亜也。

まりと早希が教室に戻ると、ホームルームが始まるところだった。
「先生。クラスで話し合いたいことがあるんですけど。」圭子が言う。
「池内さんのことについて話し合いたいんです。」
下駄箱まで来た所で、亜也は机の中にノートを忘れたことを思い出し引き返す。
「今、池内さんのことがPTAで問題になっていること、
 みんなも知っていると思います。
 クラスとしても、意見をまとめた方がいいと思います。
 私は、池内さんに合わせることによって、クラス全体の活動に
 支障が出ていると思います。
 池内さんのためにも、どうしたらいいか話し合ったらいいと思います。」
教室のドアの手前で、クラスの様子に気付く亜也。
「先生、ずっとこのままで行くんですか?」
「ちょっと、このままじゃ辛いかも。」
「同情はするけど、授業が遅れるのだけは勘弁してほしいよな。」
遥斗がみんなの顔を黙って見ている。
「俺もまぁ、そう思う時あるけど。
 でも、池内に早く歩けって言ったって、無理な話だし。」と耕平。
「池内さん、かわいそうですよ。
 5分とか、10分ぐらいなら、待ってあげましょうよ。」
「でもさ、受験とか近くなってくるとさ。」
「杉浦さんたちはどうですか?」
「亜也は、いろいろ悩んで、でも必死で、すごくがんばってるんだよ。
 ほんの少し支えてあげるくらい、迷惑にはならないでしょう?」まりが答える。
「でも杉浦さん、池内さんのせいで怪我して、 
 バスケの試合出られなかったんだよね。」
「それは・・・そうだけど。」
「松永さんは?」
「私は、毎日校門まで迎えに行ってて、教室移動もほとんど一緒で、
 亜也が大好きだし、友達だからやってるんだけど、
 でも、たまに、結構きつい時もあって、
 私、勉強とか器用に出来るタイプじゃないし、
 部活もあるし、
 たまには、朝寝坊したいって、思う時もあって。」早希が泣きながら答える。
「限界じゃねーの?」
「これからずっとって考えるとさ。」
「助けてあげたくても、無理じゃない?」
生徒たちが口々に言う。
「わかった!わかった。みんなの意見はわかった。
 この件については、ちゃんと池内のご家族と相談して、」担任の西野が口を開く。
「お前らズルいよ。
 あいつの前ではいい人の振りして、親切にして。
 あいつが何度ごめんねって言っても、平気平気って繰り返して。
 あいつがいない時にこんな話して、
 本当は迷惑でした、なんて、
 ずるいよ。」
「麻生、あのな。」
「嫌だったらもともと親切になんかすんなよ!
 面倒だ、困ってる、疲れる、ってあいつの前で言えよ!
 そしたらきっとあいつわかったよ。
 助けてもらわないで済む方法だって考えたよ。」
「麻生、お前の言いたいことは良くわかる。でも、」
「お前もだよ!」
「お前!?お前って、」
「何であいつより先に親に話すんだよ。
 毎日直接顔を合わせているあいつに何で話聞いてやんねーんだよ!
 外堀埋めて追い込むような真似すんなよ!
 先生があいつとちゃんと向き合ってたら、
 あいつだってきっと自分で・・・」
そのとき、遥斗は亜也の姿に気づく。
「池内・・・。」
クラスのみんながドアの方を見る。
「亜也・・・。」
「ごめんなさい。忘れ物しちゃって。」
亜也は自分の机へと歩き、ノートを手に取り、そして黙って教室を出ていった。
亜也を追い遥斗が教室を飛び出していく。
生徒たちはみな、黙り込んだままでいた。

亜也と目が合い少しの間見つめ合う二人。
「乗れよ。」
遥斗は亜也を背負い、階段を降りていった。

車椅子に乗った亜也を押して歩く遥斗。
自転車が並んだ歩道橋まで来ると、亜也は堪えきれずに泣き出した。
黙って自分のハンカチを差し出す遥斗。
「なんか言ってよ!
 ペンギンの話とか、魚とか、犬とか、そういうのもうネタ切れ?
 この際、作り話でいいから・・・
 嘘ついても、もう怒んないから・・・。」
「なんも出来ない。
 あいつらに、偉そうに言って、
 俺だってあいつらと同じだよ。
 お前の病気知ってて、お前が辛いの、ずっと近くで見てて・・・
 でも、結局、何も出来なかった。
 頭でっかちで、口先ばっかで!
 親父の言うとおりだよ。
 ただのガキだよ!」
「・・・そんなことないよ。
 いつも励ましてくれた。
 誰にも言えないような話、聞いてくれた。
 沈んでいる時に、笑わせてくれた。
 そばにいてくれた。
 私が辛い時は、いつも一緒にいてくれた。」
「ありがとう。麻生君。」
亜也はそう言い、車椅子を自分で進ませる。
遥斗が車椅子を支えると、亜也は笑顔で「バイバイ!」と言った。
遥斗はその場に泣き崩れた。
雪が、降ってきた。

クラスの生徒たちの会話を聞いてしまった亜也・・・。
これは、辛いですね。
遥斗が生徒たちと先生にガツンと言ってくれたのが救いでした。

理加のお別れ会のお遊戯を見つめる家族。
瑞生、潮香、亜也、亜湖、弘樹が笑顔で理加を見つめる。
亜也は隣に座る父と母の幸せそうな顔を笑顔で見る。

この時、亜也が何を考えていたのかと思うと、切なくなります。
いつも亜也に笑顔を見せる両親。
このあとの自分の発言のことを考えていたんでしょうか・・・。

お別れ会のあと、並んで帰る家族。
「理加、可愛かったぞ。浜崎あゆみみたいだったな!」瑞生の言葉にみんなが笑う。
「お父さん。」亜也が車椅子を押す父に話しかける。
「うん?」
「私、お豆腐一筋のお父さんが好き。
 世界一美味い豆腐を作るっていって、自信持って言えるお父さんが好き!」
「なに、なんだよ、いきなり・・・。」
「お母さん?」
「うん?」亜也を覗き込む潮香の腕を掴み引き寄せ、そっと顔を寄せて言う。
「保健師のお母さんも好き。 
 24時間町のみんなのこと考えて、人の喜ぶ顔を生きがいにしてる、
 そんなお母さんが大好き!」
「亜也・・・。」
「だからさ、仕事辞めないでよ、お母さん。
 お父さんも、無理しないで。」
「何言ってんだよ。」
「亜湖もヒロも理加も、みーんな好き!
 こんな私のことお姉ちゃんって立ててくれるんだもん。
 私、この家族が大好き!
 だから、みんながいるから、私どこに行っても平気だと思う。
 私、養護学校に行くね。」
亜也が笑顔で言う。
家族は何と答えていいのかわからず、ただ黙って亜也の決心を聞いていた。
亜也は晴れ晴れとした表情で、青空を見上げて微笑んだ。

=学校・終了式の日=
「池内は、この3学期をもって、別の学校に転校することになった。
 がんばった池内に拍手しよう。」
西野の言葉に生徒たちはためらいがちに拍手を送る。
潮香が教室の外まで迎えにやってきた。
教卓につかまり、亜也がみんなに挨拶をする。
目を伏せる生徒が多いなか、遥斗は真っ直ぐ亜也のことを見つめていた。
「知ってる人もいると思いますけど・・・
 私の病気は治りません。
 治療法がないみたいです。
 いつか、歩くことも、立つことも、話すことも出来なくなると、
 お医者さんに言われました。
 この一年で、当たり前に出来ていたことが、 
 一つ一つ出来なくなっていきました。
 夢の中では、友達としゃべりながら歩いたり、
 バスケをしながら、思いっきり走ったり出来るのに、
 目が覚めると、もう自由には動かない身体がそこにあるんです。
 毎日が変わってしまいました。
 転ばないために、どう歩いたらいいのか。
 どうすればお弁当を早く食べれるのか。
 どうすれば、人の視線を気にしないでいいのか。
 一つ一つ頭の中で考えなきゃ、生きていけません。
 高校に行って、大学に行って、仕事をして、
 そんな風に思い描いていた未来が、
 ・・・ゼロになっちゃいました。
 生きていく道がみつからなくて、
 小さな希望の光も見えなくて、
 病気になったせいで、私の人生は壊れてしまったって、
 何度も思いました。でも・・・
 でも・・・悲しいけどこれが現実です。
 どんなに泣いても、病気からは逃げられないし、
 過去に戻りたくても、時間は戻せないし。
 だったら、自分で、今の自分を、好きになってあげなくっちゃって、
 そう思いました。
 だって、この身体になってから、初めて気付いたことが、
 沢山あるから。
 そばにいてくれるだけで、家族ってありがたいんだなーとか、
 さりげなく支えてくれる、友達の手が、
 すごく温かかったりとか、
 健康なことが、それだけで、すごく幸せなこととか、
 病気になったからって、失うばかりじゃありませんでした。
 この身体の私が・・・私だって。
 障害っていう、重荷を背負っている、私が、
 今の私なんだって。
 胸を張って生きていこうと思いました。
 だから・・・養護学校に行くことは、自分で決めました。
 みんなとは、生きる場所が違うけど、
 これからは、自分で選んだ道の中に、一歩一歩、光を見つけたいから・・・
 そう笑って言えるようになるまでに、
 私には・・・少なくても1リットルの涙が必要でした。
 だからもう私は、この学校を離れても、
 何かが終わってしまうだなんて絶対に思いません。
 みんな、今まで、親切にしてくれて、本当にありがとう・・・。」

亜也の言葉に涙が溢れます。
時に微笑みながら生徒たちに自分のことを話す亜也。
そして最後は泣きながらみんなにありがとうと言いました。
亜也の話を聞く生徒たちも泣いていました。
それを見つめる潮香は、まるで亜也を誇らしく思うような表情で
見守っていたのが印象に残りました。

母に支えられながら1-Aの教室から離れていく亜也。
亜也の去った教室では静かな教室を、生徒たちの泣く声が
あちこちから聞こえてくる。
遥斗は亜也の言葉をかみ締めるように考え・・・。

下駄箱で父に手伝ってもらいながら車椅子に乗り込む亜也。
三人は黙ったまま学校を後にする。

遥斗が勢い良く席を立つと、待っていたかのようにまりが、早希が、
他の生徒たちが、一斉に教室を飛び出していった。
階段を駆け下り、廊下を全速力で走り・・・。

校門を出ようとする三人。
「池内亜也!」遥斗の声に振り返ると、クラスのみんなが集まってきた。
驚いた表情で見つめる亜也。
遥斗は、暫くの沈黙の後、
「流れる季節の真ん中で ふと日の長さを感じます」
と歌い出す。遥斗に続き、みんなが続く。
「せわしく過ぎる日々の中に 私とあなたで夢を描く
 3月の風に想いを乗せて 桜のつぼみは春へと続きます
 溢れ出す光の粒が 少しずつ朝を暖めます
 大きなあくびをしたあとに 少し照れてるあなたの横で
 新たな世界の入り口に立ち 気付いたことは一人じゃないってこと
 瞳を閉じればあなたが まぶたの裏にいることで
 どれほど強くなれたでしょう あなたにとって私もそうでありたい
 瞳を閉じればあなたが まぶたの裏にいることで
 どれほど強くなれたでしょう あなたにとって私もそうでありたい」

三人は、みんなの歌声に見送られながら東高を去っていった。
車の中で亜也は涙をこぼしながら微笑み、そっと目を閉じた。

「いいじゃないか、転んだって。
 また起き上がればいいんだから。」
空には、秋の青い空が広がっている。

『転んだついでに空を見上げれば
 青い空が今日も
 限りなく広がってほほえんでいる
 あたしは 生きてるんだ』


エンドロールで流れた亜也さんの日記の一部。
『終業式まであと4日。
 みんなが私の為に千羽鶴を折ってくれているようだ。
 一生懸命折ってくれている姿を
 まぶたの裏に焼き付けておこう。
 たとえ別れても、決して忘れないために。
 でもーーー。
 「亜也ちゃん、行かないで」と言って欲しかった。』

そして、人に頼りすぎていたと自分を責める亜也さん自筆の日記。
『わたしのいる場所がない!』
『わたしは東高を去ります。』
『1の涙が必要だった』

亜也さんが悩んでいたこと、感じてきたこと・・・。
このドラマがフィクションでないことが、息苦しいくなるぐらい切ない・・・。
夢の中では友達とおしゃべりしながら歩いたり、バスケ部で走ったり・・・
なのに目覚めると・・・という言葉が本当に辛い・・・。

「池内亜也!」と叫んだ遥斗が、亜也にどういう言葉を言うのだろうと
思ったら・・・
言葉なんて出ないですよね。
「元気でね。」「がんばってね。」なんて言葉は亜也には必要ないのでしょう。
暫く考えたあと、彼の口から出てきたのは、
合唱コンクールで亜也の指揮の下、みんなで歌った『3月9日』でした。
亜也にとってみれば、ともすれば気休めにもならない言葉より、
ずっと嬉しかったことでしょう。

学校を去ることになった亜也がクラスのみんなに送った挨拶。
沢尻さんの、セリフの間の取り方、声のトーンの上げ下げ、
セリフを言う時の息遣い。
すごく上手ですよね。
それに、沢尻さんと薬師丸さんが似ているように思えてきたのは
私だけ?
演じている俳優さんたちの力を感じさせるドラマです。

ストーリーに関しては、実話なだけに感想を書くのがとても難しい。
亜也の病気はどんどん進行していくようです。
『1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記』を購入しました。
今日から少しずつ読んでいこうと思います。

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