Sunday, December 2, 2012

1リットルの涙 - 第 7 話


『私のいる場所』

新年を向え、家族全員で初詣する池内家。
「家族みんなが幸せでありますように。」
瑞生(陣内孝則)が願う。
「亜也姉ちゃんが良くなりますように。」 
末っ子の理加(三好杏依)がそう祈った。

亜湖(成海璃子)と弘樹(真田佑馬)はお参りが済むと車椅子の準備をし、
亜也(沢尻エリカ)は潮香(薬師丸ひろ子)と瑞生に付き添われ
ゆっくり車椅子へ向う。

「新しい年が明けた。
 そして今までよりもっと
 人の助けを必要とする生活になった。」

亜也は瑞生に背負われ階段を下りる。
「ありがとう。」
「なーに言ってんだよ。
 俺はな、段差には慣れてんだよ。昔ダンサーだったから。」
家族を笑わせる瑞生。

5人は今年最初の記念写真を撮影した。

以前よりさらに歩行が困難になった亜也は、車椅子を使うようになったが、
潮香や瑞生を中心とした家族の支えを受けながら、明るく元気に毎日を
過ごしていた。


おせち料理を食べるシーン。
亜湖はさりげなく亜也のスプーンに煮物を乗せるのを手伝ったり、
潮香は亜也の分だけでなく子供達全員分、お揃いの、割れにくい食器に
取り替えたり。
家族の優しさが溢れています。

3学期が始まり、亜也は、潮香の車で登校する。
校門の前で亜也が来るのを待っていたまり(小出早織)と早希(松本華奈)は、
潮香が荷台から降ろした車椅子を見て戸惑うが、それでも亜也への協力は
惜しまなかった。

「車椅子を使う生活になっても、
 友達は全然変わらない。
 友達っていいな。
 いつまでも一緒にいたい。」
 
ホームルームで、1年A組の担任・西野(佐藤重幸)は、進路希望のプリントを配った。
明和台東高校では、2年生になってもクラスはそのままだが、授業は進路別に
なるのだ。

放課後、生物室で潮香の迎えを待っていた亜也は、遥斗(錦戸亮)に進路のことを
尋ねた。
「麻生君はどうすんの?文系?理系?」
「なんも決めてない。」
「そんな気がした。
 獣医さんとかは?
 だって麻生君、動物のこと詳しいし。」
「そんな先のことわかんねーよ。 
 そっちは?決めてんの?」
「私?私は・・・。
 今はひたすら、他の人に何かをしてもらっている立場でしょ。
 だから・・・将来は、人の役に立てる仕事がしたいな。」
亜也の顔を見つめる遥斗。
「・・・マザーテレサか。」
「本気で言ってるのに!」
「やっぱあれじゃん。
 生きてるからには人の役に立ちたいじゃん。」
亡き兄・圭輔の言葉を思い出す遥斗。
「前に、お前と同じことを言ってた人がいたな。」
「ん?」
「医者目指して、医大行ってたんだけどさ。
 親にスゲー期待されてて。
 なんつーの?俺とは大違い。」
「友達だったの?」
「兄貴。」
「え?」
「俺の兄貴。」
「お兄さんいたんだ!」
「・・・なんちって。」
「また嘘!?」亜也が笑う。
「そろそろ行くね。お母さん迎えに来るから。」
「ここで待ってればいいじゃん。
 車来るの見えるだろ?」
「でも邪魔になりそうだし。」
「だったら、そこの水槽見て。」
「えぇ!?」
「人の役に立ちたいんでしょ。はい。」
遥斗がタワシ渡した時、亜也は窓の外に母の車を見つける。

遥斗は亜也の車椅子を押していく。
「お前の待合室にしてやるよ。」
「え?」
「生物室。」
「その代わり手伝えってことでしょ。」
「当然!」
「あ、ごめん。ちょっと待って。」
車椅子からゆっくり立ち上がる亜也。
廊下を踏み、きしむ音に微笑む。
「何やってんの?」
「私、どういう訳かこの音が好きなんだ。
 学校来ると、ついここ踏んじゃうの。
 なんか廊下が挨拶してくれてるみたいで。」
「変なやつ。」遥斗が笑った。
待合室。
亜也にとって遥斗は本当に居心地の良い場所のようですね。

家に帰った亜也は瑞生と潮香に進路調査書を見せた。
「亜也はどうしたいの?」潮香が聞く。
「うーん。
 身体を使う仕事は無理だけど、将来私にも、何か出来ることあるよね?」
「もちろん!」
「当たり前じゃないか!そんなの。
 今は家の中で出来る仕事だって多いんだから、な。」
「そうよ。勉強頑張って、翻訳を身につけるとか、資格を取るとか。」
「私・・・病気になって、人の優しさが温かくて嬉しかった。
 だからいつか、お母さんみたいに、人を支える仕事がしたいの。」
「よし!でもあまり、焦る必要はないぞ。
 じっくり考えろ。お前の人生なんだからさ。」
「うん!」
潮香は亜也の笑顔を微笑みながら見つめた。

授業中必死にノ-トを取る亜也。
教師が黒板を消そうとすると、まりがまだ書き終えてない亜也の為に声をかける。
「あ、そっか。このクラスはゆっくりやらなきゃいけなかったのよね。
 ごめんなさいね。」
「すみません。いいです。次に行って下さい。」
亜也はクラスのみんなの為にそう言う。
まりがあとでコピーしてあげる、と亜也に言った。
 
ある日、潮香のもとに西野から連絡が入る。相談したいことがあるのだという。

明和台東高校に向かった潮香を出迎えたのは、西野と教頭(児玉頼信)だった。
「担任として、こんなことを申し上げるのは非常に辛いんですが、
 亜也さんは新学年から、もっと設備の整った学校に移られた方が
 いいんじゃないかと。
 残念ながらうちの学校は、身体の不自由な生徒が生活出来る構造には
 なってないですよね。
 校舎も古いですし、階段も多いですし。」
「あの、でも・・・」
「池内さん。
 養護学校へ行かれることを、お考えになったことはありますか?
 養護学校でしたら、娘さんの状態に応じて、適切な対応をしてくれるはずです。
 今のように教室の移動で苦労することもないでしょうし、
 他の生徒に、負担をかけることもないでしょう。」
「教頭先生。娘はいつも、お友達に申し訳ないと思いながら、
 毎日みんなに感謝して、」
「それは、わかっているんですが・・・
 実際クラスの何人かからは、授業が遅れて困る、という声が上がってまして・・・。」
「ご検討いただけないでしょうか・・・。」

突然の話に驚いた潮香は、常南大学医学部付属病院を訪ね、
亜也の担当医・水野(藤木直人)に相談する。
「確かに、養護学校という選択もあるでしょう。
 カスミ市の養護学校に、以前私が担当していた患者さんがいます。
 一度お会いになってみませんか?
 彼女は、亜也さんと年も近かったはずです。
 養護学校に行くというのは、あくまで選択肢の一つです。
 今後も、学校のことだけでなく、いろいろな選択を迫られると思います。
 同じ病気の患者さんや、家族の方と話をしてみることも、
 参考になるんじゃないでしょうか。」
 
『第24回日本難病治療ネットワーク研究会
 ~脊髄小脳変性症(SCD)~』
水野はこの研究会で発表していた岡崎医師に亜也のことを相談する。
「水野先生は、どうして神経内科医になられたんですか?」
「え?」
「いや。僕は、臨床より研究が好きでね。
 神経科学という未知の領域に興味があったんです。
 研究者になりたかった。
 でも、この病気に出会ってから、どうしてもこの病気の患者さんを
 治したいと思うようになったんです。
 水野先生と同じように。」
「先生の研究室で、何かプロミッシングな結果はありますか?」
「細胞レベルでは、ある程度の成果が出ているものもあります。
 今後、モデルマウスでも試してみるつもりです。」
「SCDにモデルマウスお持ちなんですか?」
「ご希望なら、いつでも提供しますよ。」
「是非お願いします!」
専門用語などわからないところがありましたが、水野先生のこの病気への
前向きな姿勢が伝わってきました。

亜也は、西野に進路希望を提出する際、バスケットボール部を退部したいと
告げる。
西野は、亜也がまだ潮香から話を聞いていないことを知り、複雑な心境だった。

放課後、部長が部員たちに亜也の退部を伝える。
「私・・・聞いてない、そんな話。」
ショックを受けたまりは、体育館を飛び出していく。

まりが駆けつけた時、亜也はタクシーに乗り込もうとしていた。
「亜也!何も言わないでやめるなんて酷いんじゃない?」
「え?」
「バスケ部だよ。何で相談してくれなかったの?」
「ごめん。」
「亜也が部活やめるのは、身体のこともあるし、しょうがないと思ってたよ。
 だけど何で一言も言わないで決めちゃうわけ?
 私ってそんなに頼りない?」
「ごめん。そうじゃないの・・・。」
「いいよ、もう!」まりは怒って走っていってしまった。

同じころ、潮香は、水野に紹介された養護学校を訪ねていた。
そこで潮香は、亜也と同じ病気と闘っている18歳の少女・明日美(大西麻恵)と、
その母親の菊枝(かとうかずこ)に出会う。
不安げな潮香を笑顔で出迎える菊枝と明日美。
「よろしく、お願いします。
 遠いところ、ようこそ。」明日美がゆっくりと、笑顔で答える。

「発病したのは、娘が中2の時でした。
 治らない病気だなんて、誰より自分が認めたくなかった。
 出来るだけ長く、お友達と一緒に、普通の生活させてあげたかったんです。
 お嬢さん高校生でしたよね。」菊枝が言う。
「今年、2年になります。」
「一番楽しいときですね。」
「ええ。」
「私は、養護学校より、普通の高校に通わせた方が娘のためだと思っていました。
 だから、受け入れてくれる学校を全部回りました。
 転校もさせました。
 でも今は、間違いだったって思ってます。
 結局、養護学校に行きたくなかったのは、私なんです。
 もっと早くあの子をここに連れてくるべきでした。」

「また、昔の話?」明日美が言う。
「聞いてたの?」
「聞こえるよ。地獄耳なんだから。」
明日美の言葉に菊枝が可笑しそうに笑う。
「私、毎朝、着替えに、30分以上も、かかるんです。」
「ええ。」
「でも、誰も、助けて、くれません。
 ここでは、自分で、やれることは、自分で、やることになってるから。
 いくら時間があっても、足りないんですけど。
 でも、その分、時間の大切さが、わかるようになったんです。
 病気のことも、本当に、受け入れられるようになったのは、
 ここに来てからです。
 確かに、外の世界に比べたら、今、生きてる世界は、
 狭くて、小さいけど、失くしたことばっかりじゃ、ないですよ。
 病気になったのは、不幸じゃないです。
 不便なだけ。」
そう言い明るく笑う明日美の笑顔を潮香は見つめ・・・。

家に戻った潮香は、勉強中の亜也の様子を見にいき声をかける。
「お母さん、今日ね、」
「今日まりとけんかしちゃった。」
「え?」
「何も言わないで、バスケやめちゃったから。」
「そう・・・。」
「あ、先生に進路希望出してきたよ。」
潮香の顔色が変わる。
「授業は選択だけど、クラスは持ち上がりでしょ。
 私がみんなと対等に出来るのは、もう勉強しか残ってないから。
 だから、お母さんに言われたように、勉強頑張るね!」
「・・・そうね。」潮香にはそう答えることしか出来なかった。

放課後。
まりはノートのコピーを事務的に渡すと教室を出ていってしまった。
そんな様子を遥斗は見ていた。

「部活やめたぐらいでいちいちケンカするかなー。」
亜也の車椅子を押しながら遥斗が言う。
「私、本当は悔しかったんだ。 
 まりとは、中学からずっと一緒にバスケやってたし。
 でもまりにしてみれば、裏切られた気持ちだよね。
 今まで何でも話してきたから。怒るの無理ないよね。」
「お前さ、俺に言ってることそのまま杉浦に言えばいいんじゃないの?
 待ってるんじゃないかな。」
亜也は潮香にも言わなかった気持ちを遥斗に素直に話しているんですね。

潮香の待つ車まで亜也の車椅子を押していく遥斗。
潮香はそんな遥斗を夕食のすき焼きに誘う。
「いや、あの・・・」
「都合、悪い?」潮香が聞く。
「お父さん、ご在宅ですか?」

「ガンガン食え、ガンガン!
 遠慮すんな遠慮すんな!
 これがな、我が家の自慢の豆腐だ!
 うちの豆腐はな、原料からこだわってるからな、
 そこら辺のスーパーの豆腐とはワケが違うんだ! 
 これが焼き豆腐だろ、これが木綿。でこれが絹ごし。」
瑞生の勢いに押されっぱなしの遥斗。
そんな遥斗を見て微笑む亜也。
「すき焼きに呼んだのに豆腐ばっかりってどういうことよ!」潮香がたしなめる。
「いやだってさ、俺は別にケチで言ってるんじゃないんだぞ。」
「美味いです!」と遥斗。
「だろ!?」
「すみません、いたらない父で。」と弘樹。
「ほんとどうも、!!いたらないって何だ!」
「ほんとのことじゃーん!」と亜湖。

「麻生君も将来、お父さんみたいにお医者さんになるの?」潮香が聞く。
「いえ・・・。」
「医大に行ってるお兄さんがいるって言ってたよね。」
「そうなんだー!」
「いたんですけど、・・亡くなりました。
 2年前、事故で。」
「ほんとだったの?」と亜也。
「ごめんなさいね。知らなくて。」と潮香。
「いえ。」
「だったらあれだ!お前兄ちゃんの分まで親孝行しないと、な!」
瑞生はそう言い遥斗の背中と腕を叩く。遥斗は思わず苦笑い。
「遠慮すんな。肉食え肉!なんで豆腐ばっか食ってんだ。」
遥斗の皿は豆腐と肉で山盛りに。
瑞生の飾らない優しさが遥斗には心地よさそうでした。
ぶたれた時の笑みは、素っぽかった!?(笑)

食後、ガンモをかまいながら遥斗が言う。
「ほんっとお前デカくなったよな。
 毎日豆腐食わされてんのか?」
「そんなわけないじゃない。」亜也が笑う。
「あの親父さんならあり得る!
 お前んち、いい家族だな。」
「うん。私もそう思う。」
「お前はちゃんと居場所があっていいよな。」
「ん?」
「・・・もっとでっかくなれ。な!」ガンモに語りかける遥斗。

屋上にいるまりに、亜也は声をかける。
「まり。あのね、私・・・」
「中学ん時さ、3ポイントシュートが決まらなくて、
 二人で朝練したよね。」
「うん。」
「初めて決まった時、すごい嬉しかった。
 県大会の決勝、覚えてる?」
「忘れるわけないじゃない。
 最後のシュートで逆転されちゃって、まり大泣きしたもんね。」
「次の日目腫れたよ。」
二人は微笑む。
「私、中学の部活、亜也がいたから辞めずに済んだんだよ。」
「え?」
「先輩とすごく合わなかったでしょ。
 だけど亜也が一緒にいてくれたから、頑張れた。 
 今頃言うなって感じだよね。」
「ううん。」
「でも亜也が辞めるって聞いて、急に心細くなって、
 ついキツいこと言っちゃったの。
 ごめん。」
「私こそ、ごめん。」
「亜也、バスケ辞めても友達だよね、私たち。」
「当たり前じゃない。」
二人は晴れ晴れとした表情で笑いあった。

自宅。
理加の描いた絵を貼ろうとセロテープを探す亜也は、引き出しを開けたとき
養護学校の書類を見つけてしまう。
そのパンフレットに目を通す亜也。
高校の進学状況、進学した生徒数0、という数字に亜也は・・・。

夕食時。
元気のない亜也に、潮香はどうしたの?と声をかけるが
亜也は笑顔を作り「何でもない。」と答えた。

部屋から降りてきた亜也は、潮香と瑞生に聞く。
「養護学校、行ってきたの? 
 パンフレットあったから・・・。」
「この間行ってきた。」
「折を見てな、お前にも、話しをしようと言ってたんだよ。」と瑞生。
「水野先生にね、亜也と同じ病気の患者さんを紹介されたの。
 亜也より一つ上だけど、すごく明るくて、しっかりした女の子。」
「亜也、お父さんとお母さんな、お前が将来を選べるように
 いろんな選択肢を用意したいと思ってるんだよ。」
「だから、養護学校もその一つとして、」
「私の将来は私が決める!
 ・・・病気の為に、部活とかやめなきゃいけないのはしょうがないと思う。
 他にも、いろんなことをいっぱい諦めてきたけど、
 でもしょうがないと思ってる。
 みんなと同じようにいかないこともよくわかってる。
 でもそれでも、まりたちと一緒にいたいの!
 友達のいないところなんて行きたくないよ!
 友達までいなくなったら、私、私じゃなくなっちゃうから。
 だから、・・・お願いします。」涙をこぼしながら訴える亜也。
「わかった。
 亜也が一番、亜也らしくいられるのは、東高なのね。」
亜也がうなずく。
「だったらもう何も言わない。
 お母さんも、亜也の将来は、亜也自身に決めてもらいたいから。」
潮香の言葉に、亜也に笑顔が戻る。

亜湖に付き添われバスケの新人大会県予選を見学しに体育館へ向う亜也。
潮香は保護者会が開かれる教室に向かう。
「段差多いから押しにくいでしょ。」亜也が車椅子を押す亜湖に言う。
「別に。
 まりちゃん達に出来て、私に出来ないってことないよ。」
「ありがとう。」

体育館に着くと、まりや部員たちが駆け寄る。
「はいこれ。みんなとお揃い!」まりがミサンガを付けてくれた。
「でも、私・・・。」
「コートにはいられなくても、亜也は私たちのチームメイトだから。」
「今日は亜也のために勝つからね!」
「うん!」
試合が始まった。
亜也は精一杯声援を送る。

教室では進路指導に関する説明がされていた。
父兄の一人が手を挙げる。
「一つ、よろしいでしょうか。ちょうど、池内さんがいらっしゃるので。
 池内亜也さんのことについて、学校側は、今後どう
 対処なさるつもりなんでしょうか。」
「うちの娘からは、授業がたびたび遅れると聞いているんですけど。」
「そんな状態で、他のクラスと差が出るってことはないんですか?」

「今後については、現在、池内さんと話し合っているところです。」
教師がそう答える。

「みなさまには、本当にご迷惑をおかけしています。
 娘も、充分それをわかっています。
 私どもとしましても、出来る限りのことはするつもりですので、 
 どうか、もう少し、娘が東高にいられるように、
 助けてやっていただけませんでしょうか。」

「充分やってるじゃありませんか。
 そのせいでうちの早希は、二学期の成績が落ちてるんですよ。」
「お子さんは車椅子をお使いなんでしょう?
 常に誰かの助けを必要としているわけですよね。」

「はい・・・。」

「もしうちの子がお手伝いしている時に何かあったらって思ったら、
 心配でしょうがないんですよ!」
「責任なんて取れませんし。」
「まぁ、同じ親としては、応援してあげたいって気持ちも、
 ありますけどね。」
「池内さんが、お子さんのことを思われるのと同じように、
 私たちも自分の子供が心配なんです。」

「それは、その通りだと思います。」

「でしたら・・・。」
「やはり、設備が整ってないところより、
 もっと、お嬢さんの環境に合った所があるんじゃないでしょうか。」
「あの・・・娘さんのご病気、回復は困難と伺ったんですが・・・。」

丁度廊下を通りがかった遥斗は親たちの言葉に耳を傾ける。

「娘の病気は、主治医の先生から、治療法のない病気だと言われました。
 いずれは、字を書くことも、一人で食事を取ることも、
 話すことも、難しくなるそうです。
 最初は、信じられませんでした。主人も私も。
 他の病院を回ったり、何冊も医学書を読んだりして。
 何かの間違いだと思いたくて。
 でも・・・事実でした。
 娘に、病気のことを話したとき、言われました。
 どうして私なんだって。
 まだ、15才なのにって。
 娘はこれまでに、いろんなことを諦めてきました。
 休みの日に友達と映画に行くことも。
 大好きな部活も。
 でも、そんな娘が、学校に行くことは、本当に楽しみにしてるんです。
 友達に会えるって、毎日笑顔で登校していくんです。
 このまま、この学校に、ずっとはいられないことも、
 娘はわかっているはずです。
 ですから、もう少し、ほんの少しだけ、
 娘に、考える時間を頂きたいんです。 
 どうか、自分で決断するまで、待ってはいただけないでしょうか。
 いつかこの学校を去るとき、自分の将来は自分で決めたんだって、
 そう胸を張って、大好きな東高から、転校させてやりたいんです。
 親のわがままだということは、重々わかっています。
 でも、どうぞ、・・・どうか;・・・よろしくお願いいたします。」
潮香はそう言い、父兄達に頭を下げた。
遥斗はそっとその場を離れる。

「池内さん、確か保健師をなさっているんでしたよね。」
「はい。」
「そんなにお子さんをここに通わせたいのなら、 
 あなたが側に付いていればいいじゃないですか。」
「お仕事、辞めることは出来ないんですか?」

「体育館に響く、ボールの音が好き
 放課後の、静まり返った教室も
 窓から見える風景も
 床のきしむ廊下も
 ホームルーム前のおしゃべりも
 みんな好き
 迷惑をかけるだけかもしれない
 何の役にも立てないかもしれない」
『それでも わたしはここにいたい
 だってここが わたしのいる場所だから』

『友達って対等に付き合ってくれるから、ありがたい。
 「読書するようになったのは、亜也ちゃんの影響よ」
 と言われた。
 「ああ、よかった」
 私は彼女たちに迷惑ばかりかけていたんじゃない・・・
 と、思ってもかまいませんよね。』

※一部公式HPあらすじを引用。

最後の文章は、お友達と一緒に映る車椅子姿の亜也さんの写真と一緒に
流れました。

養護学校、という選択肢が目の前に現れとまどう亜也、そして家族。
潮香は同じ病気を抱える明日美とその母親と話をすることで
その選択肢を前向きに受け止めるようになった。
それでも亜也の希望を優しく受け止める潮香、そして瑞生の姿に
親の愛の深さを感じました。

友達ってありがたい、とひしひしと感じている亜也にとって、
あの強い亜也が涙を流して拒絶するほど大きな出来事。
養護学校という未知の世界に飛び込むことの恐れもあるでしょうが、
それ以上に、友達とはなれることが寂しくて仕方がないのでしょうね。
あまり弱音をはかない亜也の涙が痛々しかった。

自分たちの子供のことを考え、迷惑そうにする親たち。
潮香に仕事を辞めてはとまで口を出す。

現実の厳しさを突きつけられたような思いです。
もしも私があのクラスの保護者の一人だったら・・・。
いろいろと考えてしまいますね。

今回登場した明日美役の大西麻恵さんと菊枝役のかとうかずこさんは、
映画版『1リットルの涙』の亜也・潮香役。
お二人にとっても、思いいれの強い作品なのだと想像します。
明日美と菊枝の明るい穏やかな雰囲気に、潮香はどれほど励まされた
でしょう。

亜也の家族を羨ましがる遥斗にも、居場所が見つかるといいです。
もしかしたら水野と一緒に亜也の病気の研究という道を選ぶのかもしれません。

次週、亜也は決断するんですね。

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