Sunday, December 2, 2012

1リットルの涙 - 第 6 話


『心無い視線』

「そろそろ寒い季節になる。
 私も思いっきり走って、体を温めたい。
 でも、また少し、歩きにくくなった。」

秋も終わりに近づいたある日、亜也(沢尻エリカ)は、潮香(薬師丸ひろ子)とともに、
愛犬のがんもを連れて歩行訓練を兼ねた散歩に出かける。
近所の人がすれ違いざま二人に会釈をし、そして振り返ってヒソヒソと噂する。

散歩の途中、亜也たちは、ひとりで黙々とサッカーの練習をしている
弘樹(真田佑馬)の姿を見つける。
今度こそ試合に出たい、と言う弘樹。
亜也は、シュートが苦手だという弘樹のために、ぎこちない手つきで
コンクリートの壁に石でサッカーゴールを書きはじめる。
亜也が何をしようとしているのかに気付いた潮香は嬉しそうに微笑み、
ゴールの半分を一緒に描く。
「いいヒロ。
 やみくもにシュート打つんじゃなくって、
 ちゃんとこの枠の中を狙うの。
 頭の中でイメージして、一本一本丁寧に、大切にシュートするの。」
そう、イメージトレーニングを進める亜也。
弘樹は一生懸命ボールを打ち込む。

帰り道。
「亜也姉がサッカーに詳しいなんて知らなかったよ。」
「サッカーもバスケも、イメージトレーニングが大事なのは一緒でしょ?」
「俺、絶対に試合出てみせるからね。
 そしたら亜也ねえ、絶対応援に来てよ。
 絶対だよ。約束!」
弘樹の言葉に亜也は笑顔で頷いた。


弘樹は、すれ違った近所の主婦たちがあからさまに亜也の病気の話をするのを
耳にしていた。
「今の池内さんとこの?」
「そう。一番上のお姉ちゃん。」
「東高に通ってるっていう?」
「そうよ!頭もいいし、スポーツ万能でね。
 でもね、詳しくは知らないけど、病気らしいわよ。」
「そうなの?気の毒ねー。」
その言葉に弘樹の表情が一瞬曇ったが、母に呼ばれ二人の元へと駆け戻った。

「思いっきり走ることは出来なくなったけど、
 ゆっくりとしか歩けないけど、
 それでも、私にはやれることがきっとあるはず。」

別の日、常南大学医学部付属病院を訪れた亜也は、担当医・水野(藤木直人)の
診察を受ける。
潮香は、亜也がリハビリ訓練をしている間、最近の彼女のようすを水野に伝える。
「最近は、日を追うごとに前向きになっているみたいです。」
「そうですか。」
亜紀の日記をチェックする水野。
「文字の乱れはそれほど進行していないみたいですね。」
「今度の薬は亜也に合ってたようで、以前より、調子が良いように思います。
 もしかしたら、このまま、治るんじゃないかって
 思えたりするぐらいで・・・。」

潮香の話を聞きながら日記を読んでいた水野は
『昼休み、お弁当のときに、お茶を飲んだら、少しむせた。』
という一行に表情をこわばらせる。

「もしかしたら、このまま・・・。
 先生?」
「あの薬は、劇的に症状を改善するというのではなく、
 長期に渡って、症状の進行を、抑制する、というものですから。」
「・・・そうですよね・・・。」
希望を持ちたい潮香の気持ちが伝わってきました。

夕食の準備をする潮香。
亜也のハンバーグを一口サイズにカットする。
瑞生(陣内孝則)は新しい取引先が決まりそうだとご機嫌だ。
そのために店番を子供達に頼むが、亜湖は委員会、弘樹はサッカーの練習が
あり、亜也が引き受ける。
瑞生は心配そうだったが、潮香は
「大丈夫。そんなに心配しなくても!」と笑顔で言った。

潮香のこの姿勢ってとても大切なんですよね。
それから瑞生、「フォーッ」連発。(笑)HGモードです。
前回姉の病気の説明を受けた亜湖の表情が、とても柔らかくなりましたね。
瑞生と今までのように言い争いはあるのですが、それもまろやかに。
まるで子犬のじゃれあいのようです。(笑)

あくる日、亜也は、ひとりで登校する。
学校での亜也のサポート役を務めるまり(小出早織)や早希(松本華奈)が、
バスケットボール部の新人戦に備えて朝から練習に出ているためだった。
亜也は、水槽の前で調べ物をしている遥斗(錦戸亮)に声をかける。
「いつも二人に甘えられない。」
亜也は遥斗にそう言った。

担任(バスケ部の顧問)が通りがかり、亜也に
「調子が良くなったらいつでも戻ってこい。」と声をかけた。
「この足じゃバスケなんて無理だっつーの。」
教師の背中にそう呟く亜也。
「ねぇ。」遥斗に同意を求めるが、遥斗はそれには答えず
生物部の仕事を手伝わせ、生物室へ。

「そこのビーカー取って。」
「人使い荒くない?私、体が不自由なんだよ。」
「威張んなよ。」
「別に威張ってないけど。」

遥斗は自分が読み上げる数値を亜也にノートに記入させる。
「ねぇ。私のこと生物部だと思ってない?」
「いいじゃん。どうせ暇だろ?」
「・・・そうだね。」亜也が笑う。

朝比奈川の水質調査をしている遥斗。
顕微鏡でプランクトンを見る遥斗に、「私にも見せて。」と亜也。
遥斗はすぐに席を開けてくれた。
「市役所の環境保存課と合同で、何年も続いてるんだ。
 手伝えよ。」
「うん。考えておくわ。」

二人の様子に富田圭子(葵)と大橋美歩(川原真琴)は
「なんか最近あの二人急接近って感じよね。
 いいの?のんびりしてたら亜也に取られちゃうんじゃない?」
「とられるわけないでしょ。あんな子に。」
と話していた。

瑞生は、亜也の治療費を捻出するために、新規の取引先を増やそうとしていた。
契約してくれそうなスーパーに行く為、亜也に店番を頼み、瑞生は
あるスーパーを訪れる。
だが店長の恩田(森喜行)に、自分の店の豆腐を置いてほしいと何度も頭を下げる
が、あっさりと断られてしまう。
そこに、店長の息子で、亜也のクラスメイトでもある耕平(水谷百輔)が帰ってきた。
瑞生に気づき、それを父親に告げる耕平。
息子から亜也の病気の話を聞いていた恩田は、
「お宅も大変なんだな」というと、瑞生の豆腐を自分の店で扱うことにする。

亜也が店番をしていると、近所の主婦(円城寺あや)が豆腐を買いにやってきた。
「亜也ちゃんが店番してんの!?
 いいいい!私がやるから。亜也ちゃんは座ってて!
 全く、何考えてんのかしらね、亜也ちゃんを一人にするなんて!」
その言葉を悲しそうに聞く亜也。
そこへ亜湖が戻ってきた。
客から注文を受ける亜湖の姿に、亜也は俯いてしまった。

水野はリハビリ科専門医・田辺(小林正寛)に、神戸医大の岡崎教授を
紹介してほしいと頼む。
亜也の病気は思った以上に進行が早かったのだ。
「今焦ったところで、すぐにどうこうなる病気じゃないって
 お前が一番わかってるじゃないか。」と言う田辺に、
「とにかく頼む。力を貸してくれ!」と水野は頼み込んだ。

圭子が生物室にいる恩田に、学級委員の仕事をちゃんとやるよう
文句を言いにきた。
「遥斗!何か手伝おうか?」
「いいよ、別に。」
「池内さんには手伝えって言ってたじゃない。」
「あいつは暇そうだったから。」
「私だって暇だよ。」
「なら、アンケート集計手伝ってよ。」恩田耕平が言う。
「それは恩田君の仕事でしょ!」
圭子は怒って生物室を出ていった。
圭子は遥斗を好きなのだから、もう少し優しくした方がいいと
部員たちがそう言っていたが遥斗はそれには答えなかった。

下校時、バス停に近づくバスに乗り遅れぬよう、生徒たちが走り出す。
遥斗は亜也の必死に走る姿に気づく。
自転車を亜也へと走り出し、そして思いとどまる遥斗。
亜也はなんとかバスに間に合い乗り込む。
「すみませんでした。」
「急がなくていいからね。」運転手は亜也の足を見てからそう言った。

乗客が好奇の目で亜也を見つめる中、亜也は身体障害者手帳を出し
半額分の運賃を払う。
シルバーシートに座っていた女性が
「あなた、ここに座りなさい。」と席を譲った。
人の視線を感じながら、亜也はバスに揺られていった。
遥斗はそのバスが走り去るのを見送っていた。

遥斗は亜也の走る姿に何を思ったのでしょう。
ここは自分が手を貸すところではない、
そう思ったのでしょうか。

そんな折、弘樹は、次の試合の先発メンバーに選ばれる。
「中山じゃないのかよ?」
「池内か。」
「あいつ最近上手くなったからな。」
仲間から祝福された弘樹は、姉に教えてもらったと話す。
「亜也ねえは、美人だし、頭もいいし、スポーツも出来るし、
 何でも知ってんだぜ。」
「すっげー!」
「俺池内の姉ちゃんに会いたい!」
みんながそう言うなか、メンバーに選ばれると信じていた中山が悔しそうに
弘樹を見つめていた。

家族にもレギュラー決定を祝福される弘樹。
「ヒロ。試合、絶対に応援に行くから。」と亜也。
「う、うん。」
「理加も行くー!」
「それじゃあ弁当作ってみんなで応援に行こう!」
瑞生の言葉に焦る弘樹。
「あのさ、亜也ねえ。試合の応援、無理してこなくていいからね。
 場所、遠いし。」
「大丈夫だよ。絶対に行くから。」ユニフォームを見つめ嬉しそうに答える亜也。
「う、うん。」
弘樹の様子が変なのを、家族の中で亜湖だけが感じていた。

その日の夜、亜也は弘樹のユニフォームに名前を縫い付けた。

調理場を片付けながら潮香が瑞生に言う。
「良かったわね、取引先増えて。」
「ああ・・・。」
「お父さんのお豆腐美味しいから、きっとこれからもっと忙しくなるわね。」
「この間、取引OKしてくれたスーパーのオーナーさんな、
 亜也のクラスメートの親御さんなんだよ。」
「そうなの?」
「最初は渋ってたんだけど・・・亜也のこと知って、置いてくれるって。」
「じゃあ、亜也に感謝しなくちゃね。」
「おい。お前、なんとも思わないのか?」
「何が?」
「だから、だからさ、
 純粋な気持ちでうちの豆腐を置いてやろうってことじゃないわけだろ?」
「同情だってこと?
 もしそうだとしても、同情ってそんなに悪いことかなぁ。
 同情って、人の悲しみや苦しさを、自分のことと同じように思うことでしょう?
 きっと亜也、病気になって、今いろんな人の視線を感じていると思うの。
 偏見や、差別の視線に負けないでほしい。
 乗り越えてほしい。 
 でもね、中には、本当の、思いやりを持った視線もあると思うの。
 それは、ちゃんとわかる子でいてほしい。
 難しいことかもしれないけどね。
 ・・・お父さん?」
「大丈夫だよ!俺とお前の子供だぞ。
 きっと、乗り越えてくれるし、人の気持ちもわかる子だよ。
 俺ってちっちぇーなー!
 ほんっと、お前と亜也に比べたらほんっとちっちぇーや。
 俺も頑張んなきゃな。
 亜也に負けてらんねーしよ。」
「そういうこと!」潮香が嬉しそうにそう言った。

翌日、亜也は亜湖に付き添いを頼みスポーツ用品店に買い物へ。
店の中で少年が亜也に声をかけてきた。
「ねぇ。何でそんな変な歩き方しているの?」
その子の親が慌てて亜也に謝り、子供を連れていく。
「そんなこと言うもんじゃないぞ。
 あのお姉ちゃんは体が不自由なんだからね。」
親の声が亜也や亜湖に聞こえてきた。
その店には、弘樹のチームメイト3人も来ていた。
「あれ、池内の姉ちゃん・・・。」
「何だよ、あの歩き方・・・。」

翌日、シュートの練習をする弘樹の元へ、あの3人組がやってくる。
「池内!お前って嘘つきだよな。」
「何がスポーツが得意で美人の姉ちゃんだよ。」
一人が亜也の歩き方を真似すると、「似てる似てる」と他の二人が笑い出す。
「ちゃんと歩けねぇ姉ちゃんがサッカー教えるなんて無理じゃねえか。」
「本当だよ!亜也姉に教えてもらったんだよ。」と弘樹。
「信じらんねーよ、そんなの。」
「嘘つき!」「嘘つき!」
3人は弘樹のボールを奪い、そのボールを川へ蹴った。
「拾ってもらえよ、スポーツの得意な姉ちゃんにさ!」
3人はそう言い捨て立ち去った。
川の水質調査に来ていた遥斗は途中からその様子を黙って見ていた。

家の戻った弘樹は、サッカーボールを無くしてしまったと家族に話す。
「もう一度探そう。一緒に探してあげるから。」
そう言う亜也を「いいよ。いいって!」と突っぱねてしまう弘樹。
「俺もう、試合に出れないかもしれないから。」
「どうして?」潮香が聞くと
「どうしても!」弘樹はそう言い亜也に冷たい視線を投げかけた。
「だから亜也ねえ、試合に来なくていいから。」そう言い部屋に駆け上がる弘樹。

そこへ遥斗がサッカーボールを手にやって来た。
知らせを聞き、弘樹が部屋から駆け下りてくる。

遥斗は弘樹と外に出て二人で話す。
「そうか。もうすぐ試合なのか。」
「うん・・・。」
「がんばれよ。」
「うん。」
「それからさ・・・。
 大事にしろよ。」
「え?」
「ボールも・・・姉ちゃんも・・・。」
そこへ亜也が遥斗に礼を言いに外へ出てきた。
「麻生君!ありがとね。気をつけて。」
「ああ。じゃあ。」
自転車に乗り漕ぎ出す遥斗に「さよなら。」と言い亜也は見送った。
そんな姉を見つめ、嫌悪感を隠せずに部屋へ戻る弘樹・・・。
亜也は弟の様子がいつもと違うことに気付いていた。

遥斗は家族には何があったかを話さず、弘樹と外に出て話をした。
これにも彼の優しさが伺えます。
彼は、言葉が誰をどう傷つけるか、ちゃんと考えられる人なんですね。

まりと早希が図書館に行く亜也を迎えに来た。
二人の笑顔は気持ち良いですね。

潮香に頼まれ弘樹が忘れていったサッカークラブの月謝袋を届けに行く亜湖。
亜湖が弘樹に月謝を渡していると、亜也に店で会ったうちの一人が
にやっと笑いながら声をかける。
「あれー。こっちの姉ちゃんは、ちゃーんと歩けるんだ。」
亜也のことを知らない他のチームメートたちが、集まってきた。
「池内の姉ちゃんですよね。」「僕たちにもサッカー教えて下さい!」
すると亜也に会った三人は
「この姉ちゃんじゃねーよ。」
「それにもう一人の姉ちゃん、サッカー教えるのなんて無理だって!
 ちゃんと歩けないんだぜ!
 そうだよな、池内。」
俯く弘樹。少年の言葉に驚きながらも弘樹を見つめる亜湖。少年が続ける。
「だから紹介なんて出来ねーんだよな。
 お前さ、姉ちゃんにサッカー教えてもらうより、
 歩き方、教えてやった方がいいんじゃねーのか。」
亜湖は怒りを押さえられず、その少年を突き飛ばし、
「あんたなんか、スポーツする資格はない!」と怒鳴りつけた。
そして弘樹に向かい
「何で黙ってんの!亜也ねえのことあんなふうに言われて、腹立たないの!?
 何で言い返さないのよ!」
「だってしょうがないじゃん!」
「しょうがない!?何がしょうがないのよ!」
「・・・」
「あんた亜也ねえのこと、カッコ悪いとか、恥ずかしいとか思ってんの!?」
亜湖は黙り込む弘樹の手を掴み、歩き出した。

弘樹を家に連れ帰った亜湖、
「どいて、邪魔!」瑞生にそう言い捨て部屋に上がる。
「あいつも最低だけど、あんたはもっと最低だよ!」
「亜湖、どうしたの?」「親に向って邪魔だとは何だ!?」
潮香と瑞生の言葉に答えず亜湖は弘樹に向って言う。
「何が恥ずかしいの!?」
そこへ亜也が戻ってきた。亜湖の剣幕に様子を伺う亜也。
「亜也ねえの何が恥ずかしいの!?
 亜也ねえはすごいじゃん。」
「亜湖!?」「おい、何かあったのか?」潮香と瑞生が聞く。
「亜也ねえ、毎日頑張ってリハビリして、あんなに明るくて、
 もし、私が亜也ねえみたいな病気になったら、
 あんな風に外に出る勇気はないよ。
 じろじろ見られたり、変なこと言われたら、
 あんな風に笑ってられないよ。
 私、初めて、亜也ねえってすごいって、ほんとそう思った。」
亜湖は涙を浮かべながらそう言うと、部屋へ駆け上がり、弘樹のユニフォームを
手に戻ってきた。
「これ、亜也ねえが付けたんだよ。」
ユニフォームに縫い付けられたHIROの文字を見せる亜湖。
「亜也ねえにとって、このネームを縫いつけることが、どんなに大変だったか、
 あんたわかる!?
 何時間もかけて、付けたんだよ。
 寝る時間削って付けたんだよ!
 ヒロあんたここまで出来る!?
 亜也ねえのために、こんなに一生懸命なれる!?
 何で亜也ねえのこと恥ずかしいなんて思うのよ!」
たまらずユニフォームで弟を叩く亜湖。
「亜湖・・・もういいから。」
亜湖の言葉を優しい表情を浮かべて見守っていた潮香が亜湖を止める。
「そんな風に思ってるあんたの方が、よっぽど恥ずかしい!」
「もういい。もういい。」潮香が亜湖を泣きながら抱きしめた。
母の胸で泣きじゃくる亜湖・・・。
瑞生は弘樹の頭を両手で触れながら言う。
「弘樹・・・。亜湖の行ってること、わかるよな。」
大きく頷く弘樹。
「お前・・・今お前のここイテーよな!?」弘樹の胸に拳を当てて言う瑞生。
弘樹は涙をポロポロとこぼしながら頷き、
「ごめんなさい。」父親の目を見てそう謝った。
「よし。それでこそ俺の子だ!」瑞生はそう言い優しく弘樹を抱きしめた。
亜也は家族の姿に一人声を潜めて号泣。
家族にわからないように、そっと家を出た。

路地に座り込み、一人涙する亜也は・・・。

前回、自分は優しくなんかない、と言う亜湖を
優しいじゃないか、と抱きしめた瑞生。
その亜湖が、彼女らしい優しさで弟の気持ちを変えました。
弘樹が亜也を恥じている、ということに、両親だって相当ショックだったはず。
でも潮香は弟を諭す亜湖を抱きしめ、
瑞生は反省する弟を抱きしめた。
なんて素敵な家族なんだろう・・・。

夜、笑顔で家に戻る亜也。
「遅かったじゃないか、心配したぞ。」
「じゃ、ご飯にしようか。」
家族がいつものように亜也を迎える。
部屋から降りてきた弘樹、亜也に何か伝えようとするが言葉にならない。

「あ!ヒロ。ごめん。私、試合の応援行けなくなっちゃったの。」
亜也が明るく言うが、家族はみんな黙りこむ。
「今度の日曜日ね、急な用事が入っちゃって、
 本当にごめんね!」
「急な用事って、何?」亜湖が聞く。
「あー、まりたちと一緒に、映画見に行くって。」
「そんなの断ればいいじゃん。」
「断れないよ。まりと早希にはいろいろと借りがあるからさ。」
潮香と瑞生が心配そうに顔を見合わせた。
「ヒロ。これ、今度の試合の時に使ってね。」
亜也は亜湖と一緒に買いに行ったスポーツタオルを渡す。
「ありがとう・・・。」戸惑いながら受け取る弘樹。
亜也が手を洗いに立つと、家族たちはそれぞれ、とまどいの表情を浮かべた。

=生物室=
「明日も手伝うから。」亜也が遥斗に言う。
「明日って、弟のサッカーの試合だろ?」
「うん。・・・でも、私行かないことにした。」
「何で?」
亜也の寂しそうな表情に遥斗の手が止まる。

「私はね、周りからどんな目で見られても平気。
 でもヒロの気持ちまでは考えてなかった。
 ヒロ、辛かっただろうな・・・。優しい子だから。
 最低なお姉ちゃんだよね。」
「・・・なら、行けば?」
遥斗の言葉に驚く亜也。遥斗は顕微鏡を覗き込み、そして続ける。
「お前の弟、まずいことしたなって、後悔してんじゃない?
 ほんとは来て欲しいって思っても、言えないだろうし。
 男っていうのは、繊細だからさ。」
遥斗はそう言い、顕微鏡から顔を上げ亜也を見る。
亜也がその顔に釘付けになる。
顕微鏡に当てた目の周りが黒く縁取られていたのだ。
「何それ!」亜也が吹きだす。
「え!?」
「その顔!」
慌てて鏡で確認する遥斗。
「耕平・・・。何これ・・・。」
遥斗は本当に人の気持ちがわかる人ですね。
遥斗の言葉と耕平の悪戯が、亜也に笑顔を取り戻してくれました。

試合の日。
持ち物をカバンに詰める弘樹。
ユニフォームを手に取り、亜也が縫い付けてくれたHIROの文字を見つめる。
潮香はそんな弘樹に気付き、いつもと同じ様子で水筒とおしぼりを手渡す。
「忘れ物ないわね?」
「うん!」

「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい!あとでお弁当持っていくからね!」

弘樹と母の声をベッドで聞く亜也。
「ったく、ヒロもお母さんも声でか過ぎ。」亜湖が文句を言いながら起きてきた。
亜也は寝たふりをしていた。
何かに気付いた亜湖が言う。
「亜也ねえ、起きて。 
 映画行くのが本当なら、断った方がいいかも・・・。」
「・・・本当だよ。」亜湖に背中を向けたままそう言う亜也。
「そっか・・・。」亜湖はそう言い部屋を出て行った。

亜也は亜湖が出ていったあと起きあがる。机の上に何かが置いてある。
『池内弘樹デビュー戦
 ご招侍券
 朝比奈グラウンド
 11月6日(日)10時
 キックオフ!!

 亜也ねえへ。
 絶対に来て下さい。
 お願いします。』
弘樹のイラスト入り手作り招待券が置いてあった。

「ヒロ・・・。」
潮香がやって来た。
「行こうよ、亜也。」
「お母さん・・・。」
「こんなに弘樹が頼んでいるじゃない。」
「いいのかな・・・。
 私なんかが行ったら・・・。」
「何言ってんのよ。ちゃんと読んでよ。
 弘樹書いてるじゃない。絶対に来て下さいって。お願いしますって。」
亜也が嬉しそうに笑い、そして大きく頷いた。

家族総出(+がんも)で朝比奈グラウンドに向った池内家。
瑞生、潮香、亜湖、理加、そして亜也が笑顔で声援を送る。
「亜也ねえ!」弘樹の笑顔が輝く。
「頑張ってねー!」
「あれが亜也姉だよ。
 すっげー美人だろ!羨ましいだろ!」
弘樹がチームメイトに自慢げに言う。
亜也もとびっきりの笑顔で手を振った。

「亜湖のお陰だね。」潮香が言うと亜湖も嬉しそうに微笑む。
「うん。さすが俺の子だ。」そう言い亜湖の肩に手を乗せる瑞生。
「ウザッ!」亜湖はいつものようにその手を振りほどき、可笑しそうに笑った。

「こういう時、間違えないでほしいよねー。」
亜湖が亜也が持っていた招待券を手に取り言う。
「ご招待の待が間違ってる。」
「ご招侍(ごしょうざむらい)!」瑞生が呆れる。
「あーあ。」小さな理加までがあきれ返る。
「亜也、今夜から弘樹の漢字の特訓、よろしくね。」と潮香。
「了解。」亜也が笑顔で答えた。

弘樹が倒され、ペナルティーキック。
『頭の中でイメージして、一本一本丁寧に、大切にシュートするの。』
ゴールを見つめ、弘樹は亜也の言葉を思い出す。
そして・・・弘樹のシュートがゴールに決まる!
「やったー!!」
チームメイトも家族も、弘樹のシュートに大喜び。
亜也は嬉しそうに弘樹に手を振り続けた。

「心無い視線に、傷つくこともあるけれど、
 同じくらいに、優しい視線があることもわかった。」

『だから 私は絶対に逃げたりはしない
 そうすれば きっといつか』

(一部公式HPを引用させていただきました。)
亜也、弘樹、亜湖、遥斗。瑞生に潮香。
それぞれの思いが心に染み渡るような第6話でした。

人々の心無い視線。
好奇心で見たり、本人や家族までも傷つける言葉を投げかけたり。
あの少年達のことを酷い!と怒りながら見ていましたが、
ふと、日常の中で自分はどうなのだろうと考えました。

差別や偏見以外に、同情、という言葉がありました。
亜也のことを知り、大変だろうからと取引を了解する店主。
それにひっかかる瑞生。
潮香の、同情をそんなに悪いこととは思わない、という姿勢。

人の悲しみや苦しみを自分にのことと同じように思うから、人は同情する。
偏見や差別の視線の中に、必ず、思いやりを持った視線がある。
それをわかる子になってほしい。

そんな妻の思いに、瑞生は自分の器の小ささを認め、
もっと頑張ろう、と心を入れ替える。

そして両親の期待通り、亜也は人々の視線の中から優しい視線を見つけ出した。
親の期待通り、答えを自ら見つけ出す娘。
親子の信頼関係の強さを感じます。

ここへ来て、ドラマの中の遥斗の存在意義が見えてきました。
遥斗は、もちろん亜也の恋の相手という意味もあるのかもしれないけど、
私たち視聴者が、亜也を好奇の目で見る一般の人々になるのか、
それとも、もう一歩踏み出して考えることが出来るのか、
そう、考えさせてくれる存在のような気がします。

遥斗は常に、亜也に対して今までどおり接しています。
バスを追う亜也に手を差し伸べようとして、敢えて手を貸さなかった
遥斗の決断。
あの時遥斗は何を考えていたんだろう。
彼も迷いながら、自分のすべきことを常に考えているのかもしれません。

手を貸すべきところ、そうでないところの見極めはとても難しい。
出来ることにまで手を出すのは、その人から自立を取り上げてしまう。
たとえば、お店の客の行為もそうでした。
亜也が出来ると言うのに、いいからいいから、とそれを奪ってしまうのは
亜也を傷つけてしまう行為なのかもしれません。
お客さんも悪気があってのことではない。むしろ、優しい人なのだと思う。
でもそれが、余計なお世話になることがあるんだと思いました。

自分と違う人に出会った時、必要以上にジロジロ見ない、というのは
当たり前のことですが、
出来ることまで奪わないことの大切さを学ばせてもらいました。
困っていたら、手を差し伸べる。
遥斗のように、いつも通りでいることが、亜也が感じているように、
一番居心地が良い居場所となれるのかもしれません。

No comments:

Post a Comment